「君たちはどう生きるか」から学ぶ “人間の結びつきについて”

前回は「君たちはどう生きるか」の第2章『勇ましき友』からの教訓をご紹介いたしました。
今回は、引き続き「君たちはどう生きるか」の第3章『ニュートンの林檎と粉ミルク』を題材に、人間の生き方でも重要な『人と人の結びつき』について考えていこうと思います。
一緒に、この本を読み解くことで、ぜひ、あなたの“生き方”を考えるきっかけなると幸いです!
※記事は、「君たちはどう生きるか」をご覧になった方を対象に書いております。
『ニュートンの林檎と粉ミルク』のあらすじと要点
まずは、簡単にですが第3章のあらすじと、学びのポイントをご紹介していきます。
あらすじは、少し長いので3つのパートに分けています。
おじさんのニュートンの話
第3章のエピソードは、おじさんのニュートンの話をきっかけに、物語が進んでいきます。
ある日、おじさんは、コペル君、同級生の水谷君、北見君に、なぜニュートンが林檎を落ちるのをみて万有引力の法則を導き出せたのかという話をしました。
昔、おじさんの友人から聞いた回答によると、
ニュートンは林檎を落ちるのをみて、それが何万キロも上で落ちたことを想像し、林檎だけでなく月や惑星にも引力が働いているのではと考えました。そして、それを証明するために努力をした結果、万有引力の法則を導きだしました。
参照元:「漫画 君たちはどう生きるか」『ニュートンの林檎と粉ミルク』
さらに、おじさんはこのニュートンのエピソードをおじさん自身聞いたときの思いを話しました。ちょっと良い言葉なので、一部引用して紹介します。
そういう偉大な思いつきというのも、案外簡単なところからはじまっているんだね。そうだろう。ニュートンの場合、三、四メートルの高さから落ちた林檎を、頭の中で、どこまでも、どこまでも高くもちあげていったら、あるところに来て、ドカンと大きな考えにぶつかったんじゃないか。
だからねえ、コペル君、あたりまえのことというのが曲者なんだよ。わかり切ったことのように考え、それで通っていることを、どこまでも追っかけて考えてゆくと、もうわかり切ったことだなんて、言っていられないようなことにぶつかるんだね。こいつは、物理学に限ったことじゃないけど・・・・参照元:「君たちはどう生きるか」第3章『ニュートンの林檎と粉ミルク』
この話を聞いた、コペル君は当たり前の日常の中で発見をするという視点を手に入れたようです。
コペル君の発見
その日のおじさんの話がコペル君の心に強く残り、後日コペル君は、自分が発見したことをおじさんに手紙で伝えることにしました。
「人間分子の関係 網目の法則」とコペル君はその発見を名付けています。
コペル君がラクトーゲンの粉ミルクを急に思い出して、考えてみることにしました。
考え方は、前のおじさんのニュートンの話のように林檎1個から想像を広げたような考え方です。
その発見とはこういうことです。
ラクトーゲンの粉ミルクがコペル君の家に届くまでを想像してみると、たくさんのまだ、見たことのない人たちが携わっていることを発見しました。
牛の世話をする人、牛乳を粉ミルクにする人、倉庫に運ぶ人、日本に船で運ぶ人、店頭まで商品を運ぶ人、etc・・・
参照元:「君たちはどう生きるか」第3章『ニュートンの林檎と粉ミルク』
人間は、知らず知らずのうちに見たことのない、会ったことのない人と網目のように繋がっていることをコペル君は気が付いたのです。
この手紙では、その発見のことだけをおじさんに伝えて終了していますが、後日、おじさんのノートにこの発見についてのおじさんの意見を見ることができます。
人間の結びつきについて
先ほどのコペル君の手紙を受けて、おじさんがコペル君にのこしたメッセージを見ていきます。
コペル君が発見した「人間分子の関係 網目の法則」は実は、すでに社会学の分野では「生産関係」という言葉で発見されていました。
しかし、おじさんはコペル君が自力でそのことに気づいたことを大変ほめ、さらに人間同志の結びつきについての大切さを伝えます。
その人間同志の結びつきについての大切さの要点が以下、2点となります。
- 人類の進歩との結びつきの大切さ
- 利害を超えた人間らしい結びつきの大切さ
今回の学びのポイント、2点を挙げたところでさらに、クローズアップしてそれぞれの要点を掘り下げてみようと思います。
人類の進歩との結びつきの大切さ
コペル君が気づいた「粉ミルクの発見」のように、人間は、まだ見たことのない人とも結びついています。いわば、これは空間軸を広げた結果の発見といえます。
そして、おじさんのメッセージではもう一つ大事な結びつきを挙げています。それが、人類の過去積み上げてきた学問との結びつきです。
僕たちは、出来るだけ学問を修めて、今までの人類の経験から教わらなければならないんだ。そうでないと、どんなに骨を折っても、そのかいがないことになる。骨を折る以上は、人類が今日まで進歩して来て、まだ解くことが出来ないでいる問題のために、骨を折らなくてはうそだ。その上で何か発見してこそ、その発見は、人類の発見という意味をもつことが出来る。またそういう発見だけが、偉大な発見といわれることも出来るんだ。
参照元:「君たちはどう生きるか」第3章『ニュートンの林檎と粉ミルク』 〜人間の結びつきについて〜
これは人類の歴史の積み重ねた成果物との結びつき、いわば時間軸を通した結びつきと言ってよいでしょう。
たくさんの人々がこの世の中をより良くしようと、後世に発明品であったり、研究論文であったりと残してきました。
今、まさに私たちはそんな後世の人々が残したものを更に、積み上げてより良い社会を新しく作ろうとしています。
こう考えると、私たちは過去の人と繋がっているだけでなく、まだ生まれていない未来の人々とも繋がっています。
今、未来に対して何を、どのように残していくか、それが一人一人の人生の意味にも繋がる問題だと思います。
利害を超えた人間らしい結びつきの大切さ
おじさんは人間は地球を網目のように包み込むような生産関係を構築してきたと話をしてきましたが、もう一つ大事なことがあり、それが今後の人類の課題とも言っています。
その課題とは、本当の人間らしい関係を築いてお互いに結びつくということです。
では、本当の人間らしい関係とは、どんなことなのでしょう。
以下、おじさんのメッセージを引用します。ぜひ、ご覧ください。
では、本当に人間らしい関係とは、どういう関係だろう。
君のお母さんは、君のために何かしても、その報酬を欲しがりはしないね。君のためにつくしているということが、そのままお母さんの喜びだ。君にしても、仲のいい友だちに何かしてあげられれば、それだけで、もう十分うれしいじゃないか。人間が人間同志、お互いに、好意をつくし、それを喜びとしているほど美しいことは、ほかにありはしない。そして、それが本当に人間しらしい人間関係だと、-コペル君、君はそう思わないかしら。
参照元:「君たちはどう生きるか」第3章『ニュートンの林檎と粉ミルク』 〜人間の結びつきについて〜
読んでいただけたら、もうお分かりだと思います。
本当の人間らしい結びつきとは、利害を超え、互いに好意を尽くし喜びあえる関係です。
残念ながら、世界にはテロや戦争、貧富による争いなど、互いの権益を主張するための争いが絶えません。
おじさんが言っていることは、究極の理想かもしれません。
けれど、一人ひとりが利権を超えて本当の意味で互いを尊重し、助け合う世界ができたら、どれだけ美しい世界になるか想像がつきません。
先ほどの未来に生きる人に、何が残せるかという話がありましたが、『本当の人間関係を築いた世界』を残せれば、未来への莫大な遺産として残されると思います。
すぐには、解決しない課題かもしれませんが、この課題を我々が未来に引きつぐことも、また一つ意義のあることかもしれませんね。
まとめ
以上、「君たちはどう生きるか」の第3章『ニュートンの林檎と粉ミルク』からの学びのポイントをお伝えしてきました。
空間軸、時間軸での人間関係の結びつき方、そして利害を超えた本当の人間関係の在り方、いろいろ考えるポイントが盛りだくさんだったと思います。
こういう本を読む機会がないと、なかなか自分の生き方どうするべきを考える時がないと思います。
今一度、過去に何を学び、未来に何を残したいか、そうしてどのような人間の結びつきを創っていきたいか、考えてみてはいかがでしょうか。
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